Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「お世辞が上手いんだから。」
「お!お世辞じゃないよ、ホントだって。よし!これで元気が出たぞ。午後からの駐車場係、頑張ろう!!」
そう言いながら、古庄は新聞を元の場所に戻し、コーヒーを片手に自分の席へと戻っていく。
それを見ながら、みのりは食器棚にある野上のコーヒーカップを取り出し、それにもコーヒーを注いだ。そして、3年部の自分の席に戻る途中、2年部の野上の元へと立ち寄る。
「野上先生。今日の研究授業、頑張ってくださいね。」
みのりがそう声をかけると、野上は古庄の言った通り、緊張してガチガチの表情をしていた。
「緊張しないで、楽しくやりましょう。」
コーヒーを机の上において、みのりはニッコリと笑みを向ける。
「…あ、ありがとう」
みのりを見上げて、野上の強張りが少し緩んだ。それを確認して、みのりは嬉しそうにいっそう笑顔を輝かせる。
野上はそんなみのりの極上の笑みに見とれて、とりあえずその瞬間は重い緊張から解き放たれたようだった。
みのりが3年生の授業に没頭している間に、野上の研究授業は終わっていたらしく、6限が始まる前にぞろぞろと大勢の教員たちが、反省会の会場である会議室に移動しているのに出くわした。
これから野上は、まな板の上の鯛になって、偉い先生方からの講評を受け、研究授業の総括をされる。