Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「……会いたかったよ。みのりちゃん。」
やっと石原は口を利いてくれたが、みのりは安心するどころか、その深い声色を聞いて体がますます強張った。
「会いたくて、会いたくて。気が狂いそうだった……。」
そう言いながら、石原はみのりに歩み寄り、かつてのように肩を抱こうとする。しかし、みのりはそれを拒もうと、肩をすくめて後ずさった。
「……どうして、私が連絡しなくなったのか、解ってますよね?」
「解ってるよ。……不倫はもうやめたい……。そう思ったんだよな?」
みのりは身をすくめたまま、こくんと一つ頷いた。
「だったら、不倫じゃなくすればいい。嫁さんとは別れるよ。」
石原と別れて、一年以上もの時間が経つ。その長い時間をかけて、考えた上で出した答えだったのだろう。石原の言葉の中には、迷いがなかった。
けれども、みのりは自分の耳を疑った。そして、とてつもなく大きな焦りがせり上がってくる。
「何を言ってるんですか!ダメです…!そんなこと!!私のせいで、石原先生の家族が不幸になることはありません。今、手の中にある幸せを、どうして壊そうとするんですか?私は……、そうならないためにも、あの時会うのをやめたんです。」
「君にそういう態度をとられて、はっきり分かったよ。自分がどれだけズルいことをしていたのかって。」