Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「それで、どうして奥さんと別れることになるんですか?娘さんはどうするんです?父親が不倫をした挙句離婚したなんて…、娘さんに一生消えない傷を残します。」
「もちろん娘には悪いと思うけれども、こんなに君を想いながら、何も感じられない女と一緒に暮らす虚しさは、もう終わりにしたい。」
この非情な言葉に、みのりは絶句する。石原を説き伏せるのは難しいと、絶望感に襲われる。
あの時、みのりが一方的に別れを決めただけで、石原の中ではあの時のまま何も変わっていなかった。逆に、逃げて行ったみのりを何とかして取り戻そうと、あの時以上に必死になってみのりを追い求めている。
――…やっぱりあの時、きちんと話をして別れるべきだった……。
そうすれば、石原はこんな気持ちを抱えて、一年以上も苦悶せずに済んだはずだ。みのりは返す言葉が見つけられず、唇を震わせた。
「……君のことが好きだ。何にも増して……。」
石原はそう言いながら、みのりの髪を掻き上げて、耳の後ろへとかけた。
かつては、どれだけみのりが望んでも、絶対に口にしてくれなかった言葉だ。
でも、今更そんな言葉を語られても、もうみのりの心には響かなかった。あれから時が経って、いろんなことがあって、みのりの心は変わりすぎてしまっていた。