Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
みのりはビクンと身をすくめて、更に後ずさりしようとしたが、長机に阻まれて半歩も下がれなかった。
唇だけではなく、体中に震えが走る。この状況にどう対処すればいいのか分からずに、涙だけが溢れてきた。
「……そんなふうに、奥さんと娘さんを裏切って、私と一緒にいても石原先生は幸せになれません。今ならまだ何もなかったように、元に戻れます。」
髪を撫でられながら、みのりは必死に説得した。けれども石原は首を横に振るばかりだ。
「今だって、幸せじゃない。」
「それは気持ちの問題です。私にこだわらなければいいんです。」
みのりがそう言い切ったのを聞いて、石原は弾かれたように、力強くみのりの肩を掴んだ。鋭く悲痛な眼差しでみのりを貫き、感情の高ぶりに任せ唇を震わせる。
「…愛してる。君を愛してる…!こんな気持ちは他の誰にも感じたことはない。俺には君しかいない!」
みのりがこの言葉を聞いた瞬間、唇が重ねられていた。
とっさにみのりは石原を押し退けようとしたが、石原はその腕に一層の力を込める。キスから逃れようとしても、更に後頭部を押さえられ引き寄せられて、顔を背けられない。