Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
ラグビーボールには不思議な力があって、遼太郎の心を正しい位置にリセットしてくれるようだ。
もう少ししたら、また冬休みに入る。正月には、芳野高校のラグビー部のOB会があって試合もあり、再びラグビーボールに触る機会もある。
心の中に小さな喜びを見つけて、遼太郎は自然と優しい笑顔になった。
アパートに帰ったら、約束した通り、彩恵にメールを送ろう…。何と言ってメールをすればいいのか考えなければならないけれど、少し彩恵の気持ちをほぐしておく必要がある。それが〝彼氏〟としての務めだ。
そんなことを思いながら、遼太郎がもと来た道を歩いていると、
「あの!すみません…!」
背後から突然、声をかけられた。
振り向いてみると、先ほどのグラウンドにいたコーチらしき人が追いかけてきている。何事かと、遼太郎は立ち止まり、無言で相手を見つめ返した。
「あの、ラグビー、経験者ですよね?」
「…はい。高校でやってました。」
突然の問いに、思わず遼太郎はそう答えていた。
普通の人はなかなか扱いきれないラグビーボールを、あんな見事に蹴り上げられたのだから、経験者と思われても無理はない。
「あの、突然ですみません。だけど、もし時間が許せば、練習見て行きませんか?」
と、誘われるまま、遼太郎は再びグラウンドへと足を向ける。