Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
コーチらしき人の名前は「吉住」といい、見たところラグビー部顧問だった江口と同じ年頃。がっしりした体型で、フォワードでもバックスでもいけそうなタイプだ。
小学生のラグビースクールのコーチをしていて、時折、先ほどの学校のラグビー部の練習にお邪魔させてもらうそうだ。
遼太郎はそう説明を聞いて、先ほどのラグビーボールが少し小さかったことを思い返した。
グラウンドでは、吉住が言った通り、高校生と中学生が練習する片隅で、ずっと体の小さな小学生が練習をしていた。吉住のほかに、もう一人コーチが来ている。
吉住が連れてきた初めて会う、しかもかなり歳若い遼太郎に、小学生たちが群がってくる。
「吉住コーチ!この人誰ですか?」
「ええと…。」
吉住が口ごもって視線を向けたので、遼太郎はまだ自分が自己紹介していないことに気が付いた。
「狩野遼太郎です。法南大学の1年生です。」
「狩野コーチ、ポジションは何してたんですか?」
――…か、狩野コーチ?
子どもたちは、遼太郎のことを、すっかり新しいコーチだと思い込んでいるらしい。
けれども、遼太郎はその辺の細かいことを、敢えて否定はせずに、子どもたちに話を合わせる。