Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
遼太郎は自分の袖口に視線を落としてから、樫原と佐山に困惑した目を向けた。
「それじゃ、茂森さんも一緒に来ればいいよ。遼太郎がかっ飛ばす、カッコいいとこ見たいだろ?」
気を利かせて、佐山がそう提案する。けれども彩恵は、恨めしそうな目つきで佐山を見返しただけで、再び遼太郎の袖口を見つめうつむいた。
「でも、…私。今日は狩野くんと渋谷に行きたいの。バッティングセンターは、またにするか、樫原くんと佐山くんだけで行ってもらって。」
彩恵のこの言動に、佐山と樫原の顔色が変わった。遼太郎はそんな佐山と樫原に気付いていたが、これまでの経験上どうしなければならないか、十分に心得ていた。
「……うん、分かったよ。バッティングセンターはまたにする。」
遼太郎はあっさりと、彩恵とのデートを選択してしまった。
眉間に皺を寄せて、佐山の表情が険しくなり、樫原は口をパクパクさせて、信じられないものでも見るようだ。
「よかった…!それじゃあ、また後で!」
遼太郎の鶴の一声で彩恵の表情は明るくなり、そのまま手を振って駆けて行く。
その後ろ姿を見送ってから、遼太郎は二人に向き直って頭を下げた。