Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
彩恵の方から歩み寄るために何度もアプローチされているのに、それに応えられない自分――。
「付き合おう」と言っておきながら、こんなふうでは彩恵が不安になって当然だ。
それを自覚するたびに、遼太郎は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。申し訳ない気持ちになればなるほど、遼太郎は彩恵に優しくした。愛情の代わりに、誠意を込めて…。
そうやって、なまじ遼太郎が優しいから、彩恵はいっそうワガママになった。遼太郎からの幻のような愛情を確かめるために…。
重苦しくなった足取りで、3人は次の講義に向かう。空は青く晴れ渡り、優しい日射しが照らしてくれていたが、それ以上に冷たい木枯らしがビルの合間を吹き渡り、寒さで3人は身を縮めた。
そんな中、佐山が再び口を開く。
「…でも、遼太郎…。おせっかいついでに言っとくけど、お前の気持ちはどう言ってる?俺の経験上、好きだっていう感情が持てない相手と付き合い続けても、お互いのためにならないぜ。」
まるで、遼太郎の心を見透かしたような佐山の言葉。
プレーボーイとして何人もの女の子と付き合ってきたらしい佐山だが、その時その場では真剣に恋愛の経験も積んできている。その経験を踏んでいるからこそ、今の遼太郎の状態を正確に見取っていた。