Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
それでも、小学生とはいえ、高学年ともなれば練習もかなり本格的になってくる。つい1年前まで、遼太郎自身が毎日繰り返していた練習を、今目の前にいる小学生たちが行い、少しずつ強くなっていくというワクワク感は、何とも言い難いものだった。
二人一組になって、タックルをし合う練習をしている中で、こわごわしている子どもがいて、遼太郎の目に留まった。
「目をつぶると危ないぞ。当たる瞬間も、しっかり目を開けて相手を見ないと。」
遼太郎に声をかけられて、二人が目を向けた。
「…でも、コーチ。怖くて思わず、目をつぶっちゃう。」
「コーチ、こいつはこの前ラグビーを始めたばっかだから。」
確かに、ラグビーを始めたばかりとあれば、タックルが怖いと思っても無理はない。ニッコリと遼太郎は微笑みかける。
「だけど、目をつぶると本当に危ないんだ。逆ヘッドになったりもするし。」
「逆ヘッド?」
「自分の頭が相手の前に来ることだよ。相手も押してくるから、首の骨を折るかもしれない。相手の膝で頭を蹴り上げられたりもするよ。」
「げっ…!!」
二人の子どもたちは、ますます顔をこわばらせた。このままでは、怖がらせるだけなので、遼太郎は少し焦った。