Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 俊次の少しおどけるような言い方に、みのりの気持ちも少しまぎれて、ほのかな笑顔を作れたが、体の奥から湧き出してくる震えがどんどん大きくなり、抑えられなくなってくる。


「じゃあ、みのりちゃん。俺、これから入部届出して、部活行ってくる!」


と、遼太郎によく似た切れ長の目で微笑みながら、俊次が職員室の方へと走り去って行く。


 俊次の背中が見えなくなると、みのりが必死で隠していた感情の緒が切れた。


「………遼ちゃん…!」


 無意識にそうつぶやいた瞬間、堪えきれなくなった涙がこぼれ落ちる。
 両手で顔を覆い、震える唇をきつく噛んで、遼太郎への切なく愛しい想いが、喉元にせり上がってくるのを懸命に押しとどめた。


 自分の心が、まだこの場所から一歩も踏み出せていないことを、思い知らされる。

 だけど、遼太郎はちゃんと歩き出している――。
 遠い空の下で、元気に暮らしていっている――。

 それだけは何にも増してとても嬉しくて…、涙が溢れて止まらなかった。

 誰もいなくなった放課後の犬走りで、みのりはただ独り、遼太郎を想いながら涙を拭い続けた。


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