Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
なるべく伊納と一緒にいる時間を短くするために、みのりは週の半ばの平日をその日に選んでいた。そうすれば、「仕事で遅くなった」と遅れて行けるし、「明日仕事があるから」と早く帰ることができる。
しかし、そんな小さな抵抗をしても、気が重いことには変わりがない…。
由起子の話を聞いて、伊納はみのりの中で、〝ウザい男〟から〝最低な男〟に変化していた。
「それじゃ、仲松さん。食事に行こうか。」
同僚たちの大半が職員室からいなくなった6時過ぎに、伊納が3年部の所までやって来て、声をかけてきた。
机に向かうみのりの肩が、ピクリとこわばる。
「…あの、実は…。今日中にやっておきたい仕事がまだ残ってて…。」
そう言って、取って付けたような言い訳をして最大限の時間稼ぎを試みる。
「へぇ?3年部なのに、この時期にもそんな仕事があるの?」
『ウソがばれた…!?』と、ギクッとみのりは内心跳び上がったが、ついてしまったウソは、最後までつきとおすしかない。
「それが、教務の方で…。入試のデータ処理が…。」
生活指導部の伊納には、教務部の仕事のことは判るまい。みのりは申し訳ないような顔をして、心の中では伊納の出方を計算していた。