Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「なるべく早く終わらせて向かいますから、伊納先生は先に行っててください。」
みのりがそう言うと、伊納は少し困った表情を見せたが、しょうがなく頷いた。
「6時半に予約してるから…、それじゃ、俺だけでも先に行っとこうか…。」
職員室の出入口から伊納が姿を消したのを見届けて、みのりはハァ~っと息を抜いた。
本当は伊納が訝った通り、仕事なんてありはしない。何をして過ごそうかとみのりは考えたが、こんな悪あがきをして時間を稼げるのも1時間が限界だろう。約束した以上、今日ばかりは無視するわけにも、スッポかすわけにもいかない。
何をするでもないのに時間はあっという間に過ぎてゆき、7時をとっくに過ぎてしまった。人気もまばらになってしまった職員室で、みのりはもう一度深いため息を吐いた。
そして、バッグを抱えると覚悟を決める。これから、1時間…いや2時間は、一瞬たりとも気が抜けない。
伊納が選んだ所は、個室で二人っきりで…という感じの店ではなく、ビストロ風の賑やかな雰囲気の楽しめる店だった。それを感じ取って、みのりの張りつめた気持ちも、少しだけ緩む。
楽しそうに酒を酌み交わす人々の中にいるはずの伊納の姿を探すと、ビールを飲みながら頬杖をついて、窓の外を眺めていた。