Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「ごめんなさい。遅くなりました。」
みのりが声をかけると、伊納はみのりを見上げてニッコリと笑った。幸せで満ち足りたように。
その顔を見て、みのりはドキリとする。ときめいているわけではないけれど、伊納のこの表情は心を不穏にざわめかせる力があった。
「お疲れ様。君はよく働くね。感心するよ。…何飲む?」
向かいの席にみのりが落ち着くと、伊納はそう言ってドリンクリストを差し出してくれる。
計算されつくされたような言動と表情と仕草と…。伊納はこうやって、何人もの女性を落としてきたのだろう。
「ウーロン茶を。」
みのりがそう答えるのを聞いて、伊納はさらにじっとみのりを覗き込んだ。
「飲まないの?」
もちろん、「アルコールを」という意味だろう。
――アンタの前で、絶対に飲めるわけないじゃないの!
と心の中で舌を出しながら、みのりは肩をすくめて微笑んで答える。
「お酒は強くなくて、飲めないんです。明日も仕事があるし…。」
この男と一緒にいる時に酔っぱらってしまうなんて、自ら我が身を差し出しているようなものだ。
「何か食べたいものある?」
「何でも。」
伊納はメニュー表も差し出してくれたが、みのりはそれを受け取らずに、そう答える。