Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
トイレにでも行ってくれたのかと、みのりはホッと張りつめていた緊張を少し解いた。そして時計を見て、もうそろそろ帰ってもいい頃だと、バックの中から財布を取り出す。
「それじゃ、そろそろ出ようか。」
戻ってきた伊納は、そう言うと椅子に座ることなく上着を手に取った。後に続いたみのりは、そのまま店の外に出てしまった伊納に、焦ったように声をかける。
「あの…、お会計は?」
「ああ、さっき払っておいたから。」
笑顔と共にサラッと言われた言葉に、みのりは舌打ちした。
――……しまった……!!
こんなことで、伊納に借りを作りたくない。それは、男と同じ仕事をして対等に働く、自立した女としての意地でもあった。
「いや、それはダメです。割り勘にしてください。」
みのりは伊納の目の前に回り込んで、はっきりとした口調で訴えた。
これに対して、伊納は困ったように肩をすくめる。
「そう言われても、いくら払ったか覚えてないよ。」
「だったら、適当でいいです。これ、一応納めてください。」
みのりは財布から五千円を取り出して伊納に渡そうとしたが、伊納はますます困ったように笑って両手を上げ、それを拒否した。
「それじゃ、こうしよう。この近くに知り合いのやってるパブがあるから、そこに行って、今度は仲松さんが奢ってよ。」
「………。」