Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
本音を言えば、ここで解放してもらえるかと思っていたが、これでは帰るに帰られなくなってしまった。
しょうがなくみのりは、伊納に連れられて夜の街を歩き、落ち着いた感じの小さなアイリッシュ・パブに入った。
カウンターに向かう椅子の一つを引いて、伊納はみのりを座らせてくれる。こんな身のこなし一つをとっても、伊納の動きにはソツがなく、女性の気持ちを和らげる術を知っている。
「仲松さん、ここのマスターのカクテルは絶品だけど、やっぱり飲まない?」
みのりの隣に座ると、伊納は開口一番そう言った。
そう言われても、今日は絶対に飲まないと決めている。それでなくても伊納のペースに乗せられてしまいそうなのに、飲んでしまったらそれこそ危険極まりない。
みのりが申し訳ないような素振りを見せると、マスターの方が気を利かせてくれた。
「うちには美味しいコーヒーもありますが、お淹れしましょうか。お嬢さん。」
初老の紳士の優しい声に、みのりは思わず頷いてしまう。
「マスター、俺はいつもの。」
「ギネスですね。」
そのやり取りを聞いているみのりに、伊納が語りかける。
「ここは、この街ではめずらしく、ギネスビールが飲めるところなんだ。」
「ギネスって…?」