Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 普段ほとんどお酒を飲まないみのりにとって、お酒の話は全く未知のことで、〝ギネス〟と言えば「ギネスブック」のことしか思い浮かばない。


「そう、ギネスブックの『ギネス』だよ。アイルランドのビール会社が出してた本なんだよ。」

「へぇ~、そうなんですか。」


 伊納のうんちくに、みのりは素直に感心して相づちを打つ。


「今は、ギネス醸造所からは独立してますけどね。」


 マスターがそう付け足しながら、その〝ギネスビール〟を伊納の前に置く。

 伊納と二人きりにならずに済んだことに、みのりはいからせていた肩の力を少し抜いた。


「マスター、こちらは仲松さん。俺の同僚で、日本史の先生をやってるんだ。」


 紹介されて、みのりも思わず、可憐な笑顔を見せる。


「どうぞ、よろしく。そうですか。歴史の先生。僕はあまり詳しくないので、いろいろ教えて頂きたいですね。」


 布のフィルターで本格的なドリップコーヒーを淹れてくれながら、マスターは柔らかい物腰で気の利いたことを言ってくれる。


 それから伊納も交えて、ひとしきり歴史の話に花が咲いた。

 伊納の人格はさておいて、自分の好きなことに興味を持ってくれて、質問されることはとても楽しい。改めて、歴史の奥深さに触れてもらって感銘を受けてもらえると、本当に嬉しかった。


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