Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「俺は数学の教師で理系だから、高校の頃はホントに歴史って嫌いだったんだけど、こうやって仲松さんが話してくれたようなことを聞いたりしてると、すごく興味がわくし、この歳になってようやく面白いと思えるようになったよ。」
また伊納の、この満ち足りたような笑顔。整った顔が作るこの笑みで、こんなに心地いいことを言ってもらえると、さすがのみのりも思わずドキリとしてしまう。
でも、これは伊納が女性を落とす時の技術の一つなのだ。
ひたすら褒めて称えて、自尊心をくすぐって…、そうしておいて甘い言葉を囁けば、たいていの女性はイチコロなのだろう。
――アブナイ、アブナイ……。
みのりは心の中でそう思いながら、顔ではにこやかに笑ってみせた。
思いがけず楽しい時間となった時を、一時間ほど過ごして、そのパブも出ることになった。
パブの玄関先、更けてきた夜の中で、トレンチコートのベルトを結びながら、これでやっと解放されると、みのりは息を抜いた。
そして、別れの挨拶をしようとした矢先、突然伊納はみのりの肩を抱いて引き寄せた。
「まだまだ、帰さないよ。」
「………!!」
豹変した伊納の言動に、みのりは内心跳び上がって体の制御が利かなくなった。思考も凍り付いて、何も言葉を発せられない。