Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
俊次は、そのみのりの言葉を黙って聞きながら唇を噛み、おもむろにバッグの中からペンケースを取り出す。
そして、しっかりとみのりと目を合わせて、口を開いた。
「……俺、もうとっくに課題のプリント、なくしてるんだけど……。」
それから俊次は黙々と、みのりが職員室から持ってきてくれた日本史のプリントに取り掛かった。
しかし、俊次のシャープペンシルの動きはすぐに止まり、課題どころか授業もまじめに受けていないことは、すぐに露見する。
みのりはそれを責めるわけでも叱るわけでもなく、課題への取り組み方を根気強く付きっきりで指導した。
助言を続けるうちに、コツをつかんだ俊次は、少しずつ自分だけの力で問題プリントの空欄を埋めていき始める。その様子を、みのりは傍らでじっと見守り続けた。
こうやって同じように、遼太郎を励ました時のことを思い出す。
俊次の横顔を見つめていると、まるでそこに遼太郎がいて、個別指導をしていたあの時の毎朝の光景が甦ってくるようだ。
考え込む時、軽く唇を噛む遼太郎の癖。問題プリントを見つめる、遼太郎の真剣な眼差し。
隣り合った椅子に座っているだけで幸せだった。だけど、ずっと胸が高鳴って、苦しいくらいだった…。