Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 それから毎朝、渡り廊下には、みのりと俊次が一緒に勉強する姿が見られるようになった。

 かつて、みのりと遼太郎が、毎朝個別指導をしていたように……。




 入学したばかりの慌ただしさや、大学入試が迫る焦りもない2年生。
 そんな平穏な毎日を送る中で、みのりは暇を見つけては担任する生徒たちの家庭訪問を行っていた。

…ただ、俊次の家からは足が遠のき、もう夏休みを迎えようというのに『日程が合わない』という理由で、そこに行くことを先送りしていた。


 〝俊次の家〟は知っている――。

 かつて城跡に行った帰り、みのりはそこまで遼太郎を送っていき、別れ際にキスしてくれることを望んだ…。


 自分の中に封じ込めているその時の想いや感覚…、それらを思い出すのが怖い。
 現にこの前は、心に遼太郎が過っただけで、俊次の前だというのに泣いてしまった。意識もしないうちにそうなってしまうので、なおさら怖い……。

 それが、みのりの本音だった。

 けれども、俊次の家だけ家庭訪問に行かない…というわけにもいかない。
 みのりは観念して俊次の母親と連絡を取り、その日取りを祇園の曳山の次の日に決めたのは、夏休みに入る直前のことだった。


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