Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 俊次の存在は本当に不思議で、遼太郎の面影を宿してみのりを切なくさせると同時に、その切なさを上手に紛らわせてくれる。
 少し意地っ張りでへそ曲がりなところをみせつつも、根は遼太郎と同じ純粋で明るい俊次は、いつでもみのりの心を明るく照らしてくれた。


 俊次は速攻でシャワーを浴びてきたらしく、10分足らずでさっぱりした姿を再び現した。
 大きな体を、みのりの隣に移動させ、おしゃべりに興じ始める。

 俊次のペースにはまってしまい、これでは〝家庭訪問〟というより、ただの雑談になってしまったが、親子仲は疑う余地もないくらいに良好なようだ。

 この家の暖かさが感じられて、みのりも自然と柔らかい笑顔になった。


「それじゃ、最後に俊次くんのお部屋を見せてもらえる?」


 帰り際に、みのりがそう提案すると、俊次の顔色が変わった。


「…な、なんで、俺の部屋を?!」

「他の子も、できるだけ見せてもらってるの。どんな環境で勉強してるのか、確認するために。」

「…べ、勉強なんて、家じゃ全くしてないんだから、見せる必要なんかないじゃないかっ!」


 焦る俊次を傍目で見ながら、母親がその無駄な抵抗を一蹴する。


「見てもらったら、到底勉強ができる机じゃないって解ってもらえるから、つべこべ言わずに部屋にご案内して!」


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