Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
母親のその言葉を頑強に拒むほどの根性もなく、俊次は言われるまま、しぶしぶみのりを2階へと連れて行った。
母親のあの言い様では、俊次の机はおろか、部屋自体もさぞかし散らかっているのだろうと、みのりは想像する。
すると、俊次がドアを開いて入れてくれた部屋は、思いがけないくらいすっきりと片付いていた。
窓辺と机とベッドと、部屋を一通り見回して……、自分を取り巻く空気に、みのりの全てが反応した。
ここは、遼太郎の部屋だ。
俊次に確かめなくとも、この部屋のそこかしこから遼太郎の息吹きを感じ取って、遼太郎に包み込まれているような気がした。
心と体に残る、遼太郎に抱きしめられた時の感覚――。それが呼び起こされて、頭の中が遼太郎のことだけで埋め尽くされた。
心臓が激しく脈打ち始める。目の奥が熱くなって涙が込み上げ、体の震えが抑えられなくなる。
俊次の存在など忘れ、もう自分を制御できずに、「遼ちゃん…!!」と、思わず叫んでしまいそうになる。
「こら!そこは、遼太郎の部屋じゃないの!!」
その時、母親の声が響いて、みのりは辛うじて我に返ることができた。