Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「…か、母さん。なんで言うんだよ?!言わなきゃ、分かんないのに!」
「何言ってるの!あなたのあの散らかった部屋を、きちんと先生に見てもらいなさい。」
という親子の会話を聞きながら、みのりは胸に手を当てて、必死で心を落ち着けようとした。
大きく息をして、動揺を紛らわせるように口を開く。
「…お母さんに言われなくても、すぐに分かったよ。あのポスター、元オールブラックスのスタンドオフの選手でしょ?」
みのりが指をさした先には、「ダン・カーター」の小さなポスターが貼られていた。スタンドオフをしていた遼太郎の、あこがれの選手だったのだろう。
「すっげー!さすが、みのりちゃん!よく知ってるじゃん!!」
自分の部屋のことから気を逸らそうと、俊次がみのりをはやし立てる。しかし、母親はそれを気にも留めず、みのりを手招きして、隣の俊次の部屋を見せてくれた。
案の定、俊次の部屋はありえないほどに散らかっていたが、今のみのりには、それを指摘して苦言を呈するような余裕はなかった。
懸命に、遼太郎を意識の外へ追いやろうとしてもうまくいかなかった。心の中で、打ち消しても打ち消しても、遼太郎がみのりを覆い尽くしていく。