Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
そんな浅ましいことを思ってしまった自分に対して、信じられない思いと嫌悪が充満してくる。
みのりはその嫌悪を振り払うように、窓辺に歩み寄り、窓を開けた。川を渡ってきた夜風を部屋に入れて、涙を拭いながら大きく息を吐く。
心にもたげてきた安易な誘惑を、みのりは必死で打ち消したけれども、皮肉にもそれは、苦しみで凝ったみのりの心に動き始めるきっかけをくれた。
暗いままの部屋で、みのりは服を脱ぎ、浴室へと向かった。
シャワーを浴びて、まとわりつく汗と共に苦しみも浅はかさも、全てを洗い流してしまいたかった。
俊次は夏休みになっても、毎日〝夏休みの課題〟を持って、職員室にいるみのりのところに現れた。
もちろん、日本史の課題だけではない。国語に数学に英語、芳野高校のサディスティックとも言える量の課題を、毎日コツコツと、部活に行く前の2時間ほどを使ってこなしていった。
みのりも取り立てて指導をするというわけではなく、始める前と終わる時にチェックをして進捗状況を確認するくらいのことしかしない。それで、解らない問題は一緒に考えたり、数学や英語の先生の所へ質問に行かせたりした。