Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
それでも、何か含みのある視線を投げかけてくるものだから、みのりはもう一度俊次を見返す。
「……何?まだ何かある?」
「……みのりちゃんは……、」
促されるように言葉をかけられて、俊次はその心の内にあるものを打ち明けようと、再び口を開く。
しかし、覗き込んでくるみのりの眼差しにひるんでしまった。
「…いや、やっぱ、何でもない……。」
そう言ってその話題を断ち切ると、シャープペンシルを握って課題に向き直った。
みのりはそんな俊次を不可解そうに首をかしげて見ていたが、溜息を吐いてパイプ椅子を立つ。
「それじゃ、職員室にいるから。終わったり何かあったら、声かけてね。」
俊次は微かに頷くだけで、顔は上げなかった。職員室へ向かうみのりの足音が遠ざかって、俊次はその後ろ姿を追いかけるように視線を向けた。
――…みのりちゃんは、どうして俺にだけ、こんなにまでしてくれるんだろう…?
愛にあんなふうに指摘される前から、俊次の中にもこの疑問は常に存在していた。
学習においては他にも、俊次よりも危うい生徒は何人もいる。それなのに、どうして…?
だけど、俊次はそれを口に出してみのりに訊いてみることは出来なかった。
そうしてしまうと、今のこの状態が壊れてしまいそうで…。みのりを独り占めできなくなりそうな気がして…。