Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 こんな自分に、いい加減嫌気がさす。一人だけ鬱々として歩き出すことができないばかりか、前を見据えることさえできない。

 誰かが、どっちが前か教えてくれれば…。
 誰かが…、ここから手を引いて連れ出してくれれば…。


 そう思うたびに、否が応でも蓮見のことが心に過る。みのりの手を握る蓮見のあの手の力強さは、みのりをこの苦しみから連れ出してくれるためなのだと。


 夜に自分のアパートで一人になると、みのりはますますこの思考に囚われた。

 蓮見はみのりに、遼太郎のことは忘れなくてもいいと言ってくれた。蓮見ならば、みのりの教師という仕事や歴史に対する思い、それだけでなくみのりの全てを理解して受け入れてくれるだろう。

 申し分のない蓮見と結婚することは、周りの人間たちも望んでいることで、何よりも、みのりの身の上を心配している両親を安心させることができる。


 蓮見と結婚することが、今の自分にとって一番自然なことで、一番いい選択なのだ。

 何を戸惑っているのだろう。
 頑なに不自然なことをしていることに、何の意味があるのだろう。

 このまま自然の流れに身を任せて、蓮見の想いを受け容れられたら、この苦しみから解き放たれて……楽になれる。


――……きっと、幸せになれる……。




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