Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「俺が誰か判んないのかよ?まさか忘れちゃないだろ?みのりちゃん。」
そう言われて、影になった顔を目を凝らして見る。
ギョロリとした大きな目から放たれる鋭い眼光――。愛の兄である二俣が、そこに立っていた。
「……二俣くん!」
みのりは目を丸くして、思いがけない人物との再会にただ驚いた。
しかしその一瞬後、ラグビーをするための二俣のジャージ姿を見て、みのりはとっさに恐れを抱く。
「…二俣くん、……一人?」
みのりのこの問いを聞いて、再会に弾んでいた二俣の表情にも影が差した。
「……遼ちゃんは、いないよ。俺、一人で来た。」
みのりの質問の意図を先読みして、二俣は答える。いきなり心を読み取られて、みのりはその真意を探るように二俣を見返した。
「遼ちゃんが一緒だったら、みのりちゃん、俺にまで会おうとしないだろ?」
二俣は、みのりと遼太郎との間にあったことを知っている――。
そのことに勘付いて、みのりは何と言って言葉を切り出すべきか分からなくなる。教師として、こうやって会いに来てくれた元教え子に、かけてあげる言葉は沢山あるのに…。
すると、二俣の方から気の利いた言葉を投げかけてくれる。
「……みのりちゃん、元気そうじゃんかよ。ずいぶん髪が伸びてて、一瞬誰だか判んなかったぜ?」