Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「…べ、別にゲイが悪いなんて、言ってないだろ?」
屁理屈をいうような返答に、遼太郎は今度はその男と正面の男と2人を、鋭い目つきで交互に見据えた。
「悪くないなら、負い目だってないはずだ。じゃあ、何で今みたいに、樫原をからかうんだよ?」
「……………。」
「だいたい、樫原がゲイかどうかも知りもしないで、からかうってどういうことだよ?」
遼太郎の正論に圧倒されて、男たちは何も言えなくなる。かと言って、暴力に訴えるほど、この男たちもバカではなかった。遼太郎の体つきを見たら、自分たち3人がかりでもケンカには勝てそうもない。
「……わっ、悪かったよ!…も、もう言わねーから…。」
樫原に暴言を吐いた男は、そう言い捨てると、逃げるようにその場を立ち去る。あとの2人も、樫原とは目も合わさずに、その男のあとを追った。
遼太郎とその男たちとのやり取りを、樫原は図書館の入口で見つめるばかりだった。いつもは、どうでもいいことでも口を衝いて出てくるのに、何も言葉が出てこないどころか、体がすくんでそこから動けなかった。
これまでも、佐山と一緒にいる時に、こんな風にからかわれてしまうことが何度かあった。けれども佐山は、「気にするな」と言うだけで、面倒な奴らに関わろうとはしなかった。
もちろん、樫原自身が自分でどうにかする問題だけれども、当然何も言い返すこともできず、会うたびに不快な思いを繰り返していた。