Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「これで、もうからかってこなくなると思うよ?もし、また何か言われたら、俺に言ってくれればいい。」
〝ふとどき者〟たちを退治してくれた遼太郎が、別人のような笑顔で樫原に歩み寄ってくる。
樫原は安心するどころか、この遼太郎の親切に却って泣きたくなるような気持ちになった。
「…でも、このままじゃ、あいつら狩野くんのことを『ゲイ』だって思っちゃうよ?」
そんな樫原の心配を、遼太郎はいっそう明るい表情でフッと笑い飛ばす。
「あんなヤツらにどう思われようが、別に気にすることじゃない。」
それから遼太郎が見せてくれた笑顔。
全てを無条件に受け入れてくれるような笑顔を見た瞬間、樫原は自分の中の何かが覚醒したような気がした。
図書館のエントランスを横切って、中に入って行く遼太郎を目で追いながら、その「何か」が逃げていってしまう前に捕まえようと、思わず声を上げる。
「……狩野くん!」
名前を呼ばれて、遼太郎は立ち止まって振り返る。
「あのね、僕ね……。」
けれども、事務的な用件を聞くような遼太郎の様子に、何も具体的な言葉が出てきてくれず、樫原は曖昧な感覚を飲み込んだ。
「……いや、なんでもない…。…ありがとう。」
遼太郎はそんな樫原を訝しむこともなく、小さく一つ頷くと、新聞コーナーへと足を向けた。