Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
遼太郎が座るメインスタンドは、辛うじて日陰になりつつあったが、どうやら今日は真夏日らしい。選手たちがプレーをする芝生の上は初夏の太陽が照りつけている。
そのピッチに、スタメンの選手たちに代わって、控えの選手たちが出てくる。その選手たちが体をぶつけ合い練習する様を、遼太郎は再び食い入るように見つめながら、手元にあったペットボトルの水を一口含んだ。
「――狩野さんって、本当にラグビーが好きなんですね。」
周りでざわめく観衆の会話の中に、その言葉を聞いて、遼太郎の動きが止まる。確かに『狩野さん』と聞こえたけれども、周りに知り合いはいなかったはずだ…。
ゴクンと口の中の水を呑み込んで、声がした方へ振り向いてみる。……すると、遼太郎の隣の席に、長谷川陽菜が座っていた。
一瞬、どういうことか理解が出来ずに、遼太郎の表情は固まり、言葉を失う。しかし、その視線には『何で?』という疑問が醸されていたのだろう、陽菜は肩をすくめて小さく笑った。
「…私も、ラグビー、観てみたいと思って…。」
その一言を聞いて、遼太郎はますます絶句してしまう。思考が完全に混乱してしまっていた。
そうしている内に、また選手たちがピッチに登場して歓声が上がる。遼太郎が陽菜に何も話しかけないまま、ハーフタイムが終わり、後半が始まってしまった。