Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「そのチケットは狩野さんにあげたんだから、お金は受け取りたくありません!」
陽菜の反発的な態度に、遼太郎の声もいっそう不機嫌になる。
「そういうの、逆に困るんだよ。」
「いやです!!」
そう言い捨てると、陽菜はきびすを返してスタンド席の階段を駆け上って行く。試合が終わり、競技場をあとにする観客たちの人ごみに紛れて、すぐに姿は見えなくなった。
遼太郎からは再び、疲れたため息が湧き出してくる。陽菜の思惑を想像すると、そのため息はもっともっと深くなる。
別に、どうしても今日のうちにチケット代を返さなければならないわけでもない。陽菜とは、またゼミ室で会う機会もある。遼太郎はそう思いながら財布をポケットに納めて、おもむろに階段を上がり始めた。
群衆に半ば押されながら、競技場の正面入口にさしかかった時、このラグビー場のシンボル、ラグビーボールを持った少年像の陰から、ひょっこりと陽菜が顔を出した。
意表を突かれて、またもや遼太郎は言葉を失う。そんな遼太郎に、陽菜は嬉しそうに満面の笑みを見せた。
「…チケット代の代わりに、夕ご飯、奢って下さい。それなら狩野さんも、納得がいくでしょう?」
「………。」
チケット代を払わないのも、陽菜に夕食を奢るのも、どちらをするにしても遼太郎としては納得がいかない。ここで、チケット代を払ってさっさと帰りたいのが、遼太郎の本音だった。