Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
夕刻になりつつあったが、梅雨の晴れ間の日は長く、太陽が照りつける中、二人は言葉も少なく歩き続けた。陽菜にしてはずいぶん歩いてきた気持ちだったが、やっとのことで明治神宮の入口にたどり着いた。
南参道から入って行くと、そこには東京とは思えない景色と空気が広がっている。うっそうと生い茂る木立の中はひんやりとして、二人はホッと息を吐いた。
遼太郎は木々の梢を一巡り見渡すと、歩調を緩めてゆっくりと参道を進んで行った。
大鳥居をくぐる頃、黙って遼太郎の隣を歩いていた陽菜が、不意に口を開いた。
「……そういえば、明治神宮には、『清正の井戸』がありましたよね?」
「清正の井戸?」
思いがけないことに、遼太郎も訊き返す。
「ほら、何年か前に、パワースポットって言われて、写真を携帯の待ち受けにすると『いいこと』があるとか言われてましたよね?」
「……ああ。」
そういえば、井戸の写真を撮る人が行列を作っているニュース映像を、遼太郎も見たような覚えがある。それに伴って、記憶の中の微かな知識も浮かび上がってきた。
「せっかくですから、清正の井戸にも行ってみましょう!」
ここに来ることは思ってもいなかったはずなのに、陽菜はもう楽しみを見つけているようで、弾んだ声でそう言って遼太郎に笑いかけた。