Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「…お、男の僕からこんなこと言われても、狩野くんは困っちゃうよね…。迷惑なのは解ってるよ。…だから、今まで言えなかったんだ…。」
樫原の言葉を聞いて、とっさに遼太郎の口を衝いて言葉が出てくる。
「別に、迷惑ではないよ。……男とか女とかいうのも、関係ない。」
そう言ってくれた遼太郎を、樫原はじっと見つめ返す。
自分の想いを受け入れてくれるような言葉だったけれども、遼太郎の表情には憂いが漂い、そこから希望を見出せそうになかった。
「…だけど、もし樫原が俺に『付き合ってほしい』って求めてるなら、……それには応えられない。」
言葉を選びながら、慎重に遼太郎が答えてくれるのを聞いて、樫原はますます切ない顔になる。
「…そ、そうだよね。狩野くんはストレートなんだよね…。でも、うん。その方がいいよ。」
樫原は震える声で、遼太郎に話しているよりも、自分自身に言い聞かせているようだった。
陽菜と違って自分の想いを押し付けるようなことはせず、遼太郎の心境を必死で思いやろうとしている樫原に、遼太郎は愛しささえ感じてしまう。
けれども、それは友達への親近感で、どう考えても〝恋愛感情〟ではない。