Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「樫原には感謝してるんだ。俺の大学生活が充実して楽しいのも、入学したばかりの頃、樫原が声をかけてきてくれて、親友になってくれたからだと思ってる。…これからもずっと親友でいてほしいんだけど、そういうの難しいのかな?」
真剣な表情で語りかけてくれる遼太郎を見て、樫原は『やっぱり好きだ』と思った。
本当は、〝親友〟ではなく〝恋人〟として側にいたい。だけど、その想いを押し通そうとすると、きっと遼太郎は離れて行ってしまうだろう。
「…ううん。難しくないよ。僕も、これからも狩野くんの親友でいたい。」
樫原は、遼太郎の言葉を受け入れるしかなかった。心は今まで以上に切なく痛むだろうけれども、これからも遼太郎の側にいるために、親友のままでいる道を選んだ。
安心したように柔らかく笑って、遼太郎が樫原に優しい顔を向けて立ち上がる。
樫原も笑顔を作って遼太郎がゼミ室を出て行くのを見送ると、一人でそっとにじみ出た涙を拭った。
遼太郎と樫原の間で起こったこの出来事は、ほどなく樫原の口から佐川の耳へ届けられた。
2年半もの片想いが儚く散って、さすがに落ち込んでいた樫原を、古い友人の佐山が心配して問い質したからだった。
親しい友人同士の間で繰り広げられたこの恋模様を、佐山も複雑な思いで聞き、遼太郎に対しても、やはり〝知らないふり〟は出来なかった。