Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「よー、遼太郎。猛雄とのこと、聞いたよ。……お前もいろいろ大変だったな。」
1限の講義に向かう時、階段を上りながら、佐山から声をかけられた。面白がっているわけではないことは、声のトーンを聞けば分かる。
遼太郎は佐山と目を合わせると、そのことについては何も答えず、ただ黙って肩をすくめた。
「陽菜ちゃんはともかく、猛雄は男だからな…。親友を振るのって嫌だっただろうけど…。」
佐山がそう言うのを聞いて、遼太郎ははっきり宣言するために佐山の目をしっかり捉えた。
「樫原のことと長谷川のことは、関係ない。それに、俺は長谷川とも付き合う気はない。」
いつになく強い語調の遼太郎に、佐山は少し面食らった顔を見せる。
「…でも、陽菜ちゃんは、もうほとんどお前と付き合ってる気になってるぜ?周りに『彼氏』なんて言われても、否定してないらしいし。」
遼太郎は苦い思いを、嫌な気持ちで呑み下した。
樫原があれだけ気にしていたのは、こんな事実があったからだろう。
「付き合う気がないんだったら、陽菜ちゃんに、はっきり言っておいた方がいいぜ?下手な情けをかけて深入りさせると、後で却って傷つけることになる。」
佐山の的確な助言を受けて、遼太郎も深いため息をつく。