Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「付き合えないって、最初にきちんと断ってる。勉強のことに関しては、彼女を遠ざける理由はないし。」


 自分ができる最善のことをしているのに、こんな現状を抱えてしまって、遼太郎自身も、どうしたらいいのか分からない状態だった。
 逆にこんな遼太郎の性格を見越して、陽菜は巧みに遼太郎の懐に入り込んできたとも言える。

 考えあぐねる遼太郎を見て、佐山も助言を続けた。


「こんな場合、中途半端が一番よくないんだ。俺なんかは、いっそのこと付き合ってみればいいのにって思うよ。一度付き合ってダメだったら、陽菜ちゃんだって諦めがつくだろう?」


 それでも、遼太郎は首を横に振って、佐山の言葉を受け入れない。


「ダメだよ。付き合うことだけはできない。」

「どうして?お前、今は彼女いないだろ?」


「……彼女はいないけど、好きな人はいるんだ。……だから、茂森さんとも旨くいかなくて、結局傷つけることになった。」


 初めて聞く遼太郎のこの告白は、以前彩恵も指摘していたことで、佐山自身も感じ取っていたことだった。それが事実だったことに、佐山は息を呑んで、階段の途中で立ち止まった。


「彩恵ちゃんと付き合う前からか…?ずっと、その人のことを…?」


 佐山の問いかけに、遼太郎は佐山を見つめるだけで何も答えない。ただ、見つめ返してくる遼太郎の深い眼差しに射抜かれて、佐山は動けなくなる。


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