Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
東京での研究会は、とある国立大学の付属高校が主催する地理歴史科の研究大会で、全国規模のものだった。
午前中には研究授業とその反省会、午後からは分科会や講演会と、その内容も盛りだくさん。こんな大きな研究会に出席するのは、みのりも初めてのことだったので、たくさんの刺激を受けることができて、すべての日程を終えた。
時計を見たら、まだ四時前だった。当初の予定では、これから空港に移動して帰る予定だった。けれども予約した飛行機は、ちょうど明日の同じ時間だ。かねてより、明日は年次休暇を取ってあるから、これから丸一日、自由な時間ができた……。
それでも、この期に及んで、みのりはまだ迷っていた。遼太郎に会うべきか、会わない方がいいか……。
決めかねている間にも、行く当てもないみのりの足は、自然に遼太郎の通う法南大学へと向かっている。電車や地下鉄を乗り継いで、大学の正門まで来てみたけれど、そこでみのりの足は止まってしまった。
――もし、ばったり、遼ちゃんに会ってしまったらどうしよう……。
みのりには、まだ覚悟ができていなかった。いきなり遼太郎に会ってしまうのが、怖かった。
――こんな想いを引きずっているのは、私だけかもしれない……。