Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
ほかの卒業生と同じように遼太郎にとっても、みのりは思い出すのに少し時間を要するような、〝思い出の一部〟となってしまっているかもしれない。
現に、みのりは〝今の遼太郎〟を想像することさえできない。みのりの知らない今の遼太郎に会って、何を話せばいいのだろう。
みのりは、再びあてどもなく歩き始める。歩く途中で立ち止まり、携帯電話に残されている二俣からのメールを開いてみる。そこにある遼太郎の住所に行ってみようか…という思いがよぎった。
――……でも、そこに行って、もし遼ちゃんの〝彼女〟が出てきたら……!?
二俣が言うところの、『ありもしないことを勝手に想像している』だけなのかもしれない。こんなところまで来て、同じ思考を何度繰り返しているのだろう…と思う。
だけど、いろんな可能性を想像して、みのりは怖くてしょうがなかった。
みのりは両目をギュッとつぶって、その苦しさが通り過ぎていってくれるのを待った。目を開くと、涙で視界が潤んで見える。
そのぼやけた視界の中で、一つの看板が、まるでみのりをいざなうように、意識の中に飛び込んできた。
『日本人のあゆみと環境問題』
それは、区立の博物館の企画展示を知らせる看板だった。