Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
自分に向けられている視線とみのりのそれがぶつかったとき、みのりの息は止まり、頭の中が真っ白になった。自分が今どこにいて、なにを見ているのか分からなくなった。
きっとまた、夢を見ているんだろうと思った。自分の想いが生んだ儚く切ない夢……。
みのりは何度もこんなふうに、遼太郎に会えることを思い描いていた。夜は夢の中で、昼は深い想いの中で。
……きっと今目の前にいる遼太郎も、声をかけてしまうと目の前から消えていなくなってしまうと思った……。
「狩野さん?どうしたんですか?」
そのとき、女の子の声がみのりの耳に飛び込んできた。
みのりの心をそのまま映すように、目を見開いて固まっていた遼太郎が、その一言で我に返る。
我に返っても、突然の出来事を自分の中で処理しきれないのだろう。遼太郎からは何も言葉が出てこず、ただ陽菜の方に振り向いた。
「……お知合いですか?」
遼太郎を見上げて尋ねる陽菜の両腕が、遼太郎の腕に巻き付けられているのを見て、みのりの心臓がドクンと一つ大きく脈打った。
恐怖にも似た戸惑いが体中を駆け巡る。
体が震えてくるのを感じながら、それが〝どういうことなのか〟を考えて、 みのりは自分の立場を〝教師〟の方へと切り替えた。