Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
『……先生』とつぶやいたきり、何もみのりに発せられず、陽菜の問いにも答えられない遼太郎に、みのりはニッコリとした笑顔の仮面をかぶって見せた。
「もしかして……、本当に狩野くん?」
みのりの方から話しかけられて、恐る恐る遼太郎はみのりに目を合わせた。
それから食い入るような強い視線を、みのりの顔や髪や全身に走らせて、やっと口を開いた。
「……はい。」
「こんなところで会うなんて、すごい偶然ね」
遼太郎の返事を聞いて、みのりはもっと柔らかい笑みで表情を満たした。
「……あの?」
陽菜が自分の存在をアピールするように、みのりと遼太郎の顔をかわるがわる見ながら、声を発する。すると、そんな陽菜の姿を確かめて、みのりは眼差しを和らげた。
「私は、狩野くんが高校生の時の先生です。」
「そうなんですか!ホントにすごい偶然ですね!」
パッと明かりがともるように、陽菜が笑顔をはじけさせた。その若く健康的な可愛らしさに、みのりも思わず心を奪われる。
「可愛いわね。……狩野くんの、彼女?」
みのりのその言葉に、遼太郎がハッとして、自分の腕に巻き付けられている陽菜の腕に気がついた。それを振りほどいて、みのりの言葉を否定しようとしたが、陽菜は逆に遼太郎の腕にしがみついた。