Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「はい!……みたいなものです!!」
満面の笑みで答える陽菜を、信じられないような顔をして遼太郎が睨む。そんな形相の遼太郎を見ても、陽菜は肩をすくめて小さく舌を出し、悪びれる様子はない。
「……大学のゼミの、ただの後輩です。」
遼太郎はそう言いながら、自分の腕に力を込めて、陽菜の腕の中から抜き取った。否定したつもりだったが、みのりがどんなふうに理解したのか、確かめられなかった。
「先生は、元気でしたか?」
尋ねられて、みのりが遼太郎を見上げる。その優し気な眼差しは、昔と変わらなかった。逆に、じっと遼太郎の様子を確かめるように見つめた後、また笑みを浮かべた。
「相変わらずよ。歳を取った分、体力は落ちてると思うけど。」
そう答えるみのりは、本当にあの春の日に別れた時と変わらず、透き通るように綺麗で可愛らしかった。変わったところと言えば、髪がずいぶん長くなっていて、遼太郎の記憶の中にはいないみのりだった。
「狩野くんも……、相変わらず元気そうね。」
そう言ってくれるみのりの言葉が遼太郎の全身にしみわたって、突然の再会という驚きで凝り固まっていた遼太郎の心が覚醒し始める。
早く、誰もいないところでみのりと二人きりになって、こんな当たり障りのない会話ではなく、もっと深い話をして、再会の喜びを分かち合いたかった。