Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
そのとき、この博物館の閉館を告げる放送が流れる。それを聞いて、その再会の場に居合わせた陽菜が、余計な気を利かせた。
「ここはもう、閉まってしまうみたいですし。立ち話じゃなくて、落ち着いて話しませんか?この後、一緒に食事でもしましょう!」
早く陽菜を追い払いたい遼太郎は、『冗談じゃない!』と一蹴しようとしたが、それよりも先に、みのりの方が答えた。
「デートの邪魔しちゃ、悪いわ」
こんなことを言うあたり、やはりみのりは陽菜のことを、遼太郎の〝彼女〟だと思っているようだ。
「邪魔なんて、とんでもありません。狩野さんの高校生の時の話、聞かせてください!」
陽菜からの誘いを受けて、みのりも戸惑った。
この幸せそうなカップルの前から、一刻も早く姿を消してしまいたい気もするし……。思いがけなく会えた遼太郎の様子を、もう少し見届けたい気もするし……。
みのりはチラリと遼太郎の顔を見上げて、その表情を確かめてみたけれども、そこに遼太郎の意思は読み取れなかった。
「……それじゃ、一人でご飯を食べるのも寂しいから」
戸惑っている間に、断る理由を見つけられなかったみのりは、そう答えてしまっていた。
みのりが決めてしまったことを、遼太郎は否定できない。しょうがなく成り行きで、陽菜を交えて三人で食事に行くことになってしまった。