Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
大学の近くということもあって、特に陽菜はこの辺りのお店に詳しかった。候補になるお店を数軒あげ、遼太郎に相談する。しかし、遼太郎は話を振られても、不愛想に相づちを打つだけで、ほぼ陽菜の独断でその店は決められた。
みのりは、並んで歩く二人から少し離れて付いていく。すると遼太郎が、そんなみのりを気にして振り返った。
「先生は、どうして東京に?……仕事は?」
問いかけられて、みのりは笑顔を作って答える。
「遊びに来てる感じじゃないでしょ?出張なの。東京にある国立大学の付属高校で地歴科の研究大会があったのよ。」
言われてみて、みのりの姿を確かめてみる。いつも遼太郎が学校で見ていたよりも、幾分きちんとした感じを受けた。それでも、大人の女性なのにとても可憐な感じは、遼太郎の記憶にあるみのりそのままだった。
そんなみのりを見ていると、遼太郎の胸の鼓動は、ドキドキと激しくなってくる。
目の前に本物のみのりがいるなんて、まだ信じられなかった。会いたいという思いが強すぎて、幻を見ているのではないかと思った。
遼太郎はもう、陽菜の存在なんかそっちのけで、みのりから目を離せなくなる。夢でも幻でもいいから、早くこの手にみのりを抱きしめたくてたまらなくなった。いっそのこと、みのりの手を引いて二人で駆け出し、陽菜を撒(ま)いてしまおうかと思い始める。