Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「だって、好きな人のことは、なんでも知りたくなるものでしょ?先生の目から見た狩野さんって、どんなだったのかな……って。」


 陽菜は初対面のみのりに対しても、遼太郎を好きなことを隠すことはない。それだけ〝無邪気〟ということなのかもしれないが、今の遼太郎にとってはただの〝無神経〟にしか思えなかった。

 目の前にいるみのりは、陽菜のそんな告白を聞いても、驚いたりたじろいだりすることなく、ずっと柔らかい微笑みを浮かべている。


「狩野くんは目立つ方じゃなかったけど、真面目で優秀な生徒だったわよ。……午後の授業じゃ、たまに起きてるフリして居眠りしてたこと、私はちゃあんと気づいてたけどね。」


 少しユーモアを交えて、この場の雰囲気を和ませて楽しくしてくれるのも、みのりらしいところだ。みのりの思惑どおり、陽菜はまた楽しそうに笑い声を立てた。


「先生は、何の教科の先生なんですか?」


 機転の利く陽菜は新たな質問をして、話を盛り上げようとする。そんな陽菜を、みのりもじっと観察するように見つめながら、質問に答える。


「私は、専門は日本史なの。狩野くんのお姉さんも教えたし、今は弟くんも教えてるのよ」

「ええっ!?狩野さんって、三人姉弟だったんですか?知りませんでした〜!」


 遼太郎に関する新たな事実を見つけて、陽菜はいっそう嬉しそうに笑顔を輝かせた。


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