Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
それは驚くべきことではなく、ましてや心を傷めることでもなく、みのりも初めから想像していたことだった。みのり自身がそうするべきだと遼太郎に助言し、そのためにあの日、別れという選択をしたはずだった。
心が冷たくなって凍りついていくような感覚を覚えながら、みのりも目の前にあるサラダを口に入れ、噛んで呑み込んだ。
陽菜は、遼太郎に不機嫌な態度を取られても、めげるどころではない。ケロッとした表情で肩をすくめると、今度は興味の対象をみのりへと向けた。
「先生は、ご結婚はなさってないんですね?」
みのりは、その事実を指摘した陽菜の洞察に、目を丸くした。
「……あら、どうして分かるの?」
「ピアスをしている人が、結婚指輪は付けないなんて、あんまりないんじゃないかと思って。」
自信ありげに微笑む陽菜を見て、機転が利いて可愛いだけではなく、とても賢い子なんだろうとみのりは思う。
「そう、当たり。結婚はしてないの。」
「でも、そんなにお綺麗だから、彼氏くらいはいるんじゃないですか?」
「仕事が忙しくて、彼氏なんか作る暇もないんだけど……、」
陽菜との会話の中で、みのりはそこで言葉を切って、視界の端で黙々と食べている遼太郎を捉えた。