Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
今の遼太郎には、この陽菜がいる。みのりが思い描いていた以上に、理想的な〝彼女〟がいる。この陽菜とならば、遼太郎もきっと楽しく幸せに生きていける……。
みのりは、遼太郎への未練をにじませて彼を迷わせてはならないと思った。自分も過去のことは振り切って、新しい一歩を踏み出していると、振る舞う必要を感じた。
みのりは考えた末に、その事実を告げる決心を固めた。
「……でもね。実は、プロポーズはされてるの。」
その言葉を聞いた瞬間、食べていた遼太郎の手が止まった。
「えっ?!彼氏はいないのに?」
「ええ、お見合いして、そのお相手の人から。一度は断ったんだけど、もう一度申し込まれて……。」
「断ったって、……ブサメンだったんですか?」
陽菜の受け応えに、思わずみのりが笑いを漏らす。
「ブサメンじゃないわ。びっくりするくらいイケメンだし、新聞記者のインテリよ。」
「新聞記者さんと高校の先生だったら、お似合いじゃないですかぁ!」
みのりの結婚話で盛り上がる、和気あいあいとした二人の会話は、まるで女子会のようだった。楽しげな二人の側で、遼太郎は息を潜めて固まっていた。