Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
あの春の別れの日、みのりは確かに遼太郎のことを『待ってない』と言った。みのりの年齢を考えると、結婚することも不自然ではないのに、遼太郎は大学を卒業して一人前になったら、なんの迷いもなく、みのりのもとへ戻るつもりでいた。
そんな遼太郎は、平静をよそおいながら、その内面では激しく動揺していた。いきなり突きつけられたこの現実を、自分の中でどう処理すればいいのか分からなかった。
声が震えてしまうのを懸命に抑え込みながら、遼太郎はみのりに問いかけた。
「……その人と、結婚するんですか?」
遼太郎の声を聞いて、みのりは遼太郎に視線を合わせた。
「私も、もう三十三だから……、そろそろ考えなくちゃね……。」
曖昧なみのりの返答を聞いて、遼太郎はますます不安になる。
みのりの心は、結婚する方へ向いているのではないかと。その心の中には、自分への想いなど、跡形もなくなってしまっているのではないかと。
複雑な表情を見せる遼太郎に、みのりはほのかに微笑んでみせた。そうやって笑いかけられても、遼太郎の不安は膨れ上がるばかりだった。
「狩野さん。高校生のとき、やっぱりラグビー頑張ってましたか?」
みのりは再び陽菜から、高校時代の遼太郎のことを尋ねられる。どうやら陽菜は少しでも、みのりから遼太郎についての情報を聞き出したいようだ。