Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「ラグビーのことは、私から聞かなくても、狩野くん本人からの方が詳しく聞けると思うけど。」
「それが、はぐらかされるばかりで。日曜日にコーチをしてるラグビースクールのことも、どこでやってるのかさえ教えてくれないし。」
みのりと陽菜の会話は、自分についての話題で盛り上がりつつあるのに、遼太郎の耳にはもう入っていなかった。胸の鼓動が不穏に激しくなりながら、遼太郎は向かいに座るみのりから目を離せなかった。
食べている様も微笑む様も、首をかしげたり髪を耳にかけたりする様も、陽菜の中に探していたものなどではなく、遼太郎がずっと思い描いていた正真正銘の愛しい人の姿だった。
そのみのりが、今こうやって目の前にいるなんて、本当に奇跡のような偶然だと思った。
ずっと会いたかった人にやっと会えたのに、こうやって見つめているだけなんて。
今にも溢れ出してしまいそうなみのりへの想いと陽菜への苛立ち。それらが入り混じって、遼太郎は自分の感情をなかなか制御できなかった。
ここで無理矢理に陽菜を追い払うことは、きっとみのりは望んでいないし、もし店の中で騒ぎを起こすことになれば、みのりを困らせてしまう。なによりも楽しそうに会話をし、食事をしているこの雰囲気に水を差すことは、遼太郎にはできなかった。
ただ黙って食べ物を口の中に押し込み、陽菜がもたらす他愛のない会話が通り過ぎていくのを待つしかなかった。