Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
遼太郎は笑顔を作って、みのりの手からハンカチを抜き取る。そして、みのりがいつまでも自分の顔を拭かないので、遼太郎は腕を伸ばして、みのりの顎に溜まった水滴を押さえた。
頬に張り付いた濡れた髪を撫でつけ、前髪に滴る雨水をふき取るのと同時に、髪に半分隠されていたみのりの顔がはっきりと現れてくる。
自分を見上げるみのりの澄んだ美しさに、遼太郎は胸に切なく甘い痛みが走るのを感じた。
「…なんか、こうやって先生を拭いてあげるこのシチュエーション、何度もありますね…。」
遼太郎が語りかけると、同じことを思っていたのか、みのりも遼太郎を見上げるその顔に笑みを浮かべた。
「…泥まみれになって、それはそれは悲惨だった時もあるわね…。」
みのりの自虐的な言葉に、第2グラウンドの水たまりに突っ伏してしまったみのりを思い出して、遼太郎も口元をほころばす。
箏曲部の大会の後、みのりが吉長の出産に立ち会って帰校する途中で遼太郎に会い、泣いてしまった時も…。
花園の決勝戦で、遼太郎への想いを自覚して涙が止まらなかった時も…。
そして、遼太郎に告白されて、みのりも想いを伝えた時も…。
遼太郎は優しく、みのりの涙を拭ってくれていた。
それらのことが思い出されるにつれて、みのりの中に、その時その時の想いが甦ってくる。