Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「うん。この後は、東京にいる友達と会う予定になってるの。」
遼太郎の問いに、みのりがサラリと答える。どうやらみのりの頭の中には、遼太郎と個人的に話をしようという考えはないようだ。
焦りと落胆とが入り混じる遼太郎の横で、気の利く陽菜は心配そうな顔をみのりに向けた。
「えっ?私たちと食事なんてして、大丈夫でしたか?」
「大丈夫よ。友達も仕事で遅くなるって言ってたから、逆に時間をつぶせて助かったのよ。大学生になった狩野くんの様子も知ることができて、嬉しかったし。」
そう言ってくれながら、みのりは遼太郎を見上げて、優しい視線も注いでくれる。
「これから就職活動も大変になるけど、頑張ってね。……それじゃ、元気で……。」
みのりの眼差しに、遼太郎は胸がキュンと鳴くばかりで、自分の思いをなにも言葉にできなかった。
そうしている間にも、みのりは背を向けて通りを歩き始める。その姿が遠ざかり、行き交う人に紛れてしまう時、思わず遼太郎はみのりを追って走り出していた。
みのりの口調は、もう二度と会わない人に向けられる別れの言葉を唱えているようだった。せっかくここで出会えたのに、また会えなくなってしまうなんて……。