Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「先生。せっかくだから、俺んち、寄って行ってください。その後、駅まで送って行きますから。」
遼太郎から覗き込まれて、みのりはぎこちなく目を合わせた。
「……でも、狩野くん。出かけるところだったんでしょう?」
「大丈夫です。大した用じゃなかったし。」
切れ長の優しい目を見るたびに、みのりの胸はキュンと切なく鳴いてしまう。愛しい人からの言葉は、あれだけの苦痛を伴って固めていた決意も、あっけなく流し去っていく。
「それじゃ、ちょっとだけ……。」
みのりが小さく頷くと、遼太郎はその目をいっそう優しげに和ませた。
そして、もと来た道を歩き出す遼太郎の後について、みのりも再び坂を上り始める。
一緒に歩いている。ただそれだけのことなのに、みのりの胸は張り裂けそうだった。堰を切って溢れてしまいそうな想いを押し留めるためにも、みのりはキュッと唇を噛んで、遼太郎の足元を見つめながら黙って歩いた。
遼太郎も、そんなみのりの様子に合わせているのか、それともその胸の中に抱えるものがあるのか、黙々と上り坂を踏みしめるばかりだ。
これでは、アパートの部屋の中で二人きりになると、きっともっと気まずい空気になって、遼太郎に気を遣わせてしまう。
――先生らしく、しなくっちゃ……!
ドアの鍵を開ける遼太郎の手元を見つめながら、みのりは自分に言い聞かせた。